どんな時に「お~」、「ご~」を使っているでしょうか?
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☆1 「やまとことば」には「お~」、「漢字語」には「ご~」
日本人は意識せずに「やまとことば」には「お~」、「漢字語」には「ご~」をつけて、間違えずに使っています。
「やまとことば(和語)」というのは、もともとの日本語(Original Japanese)。「漢字語(漢語)」というのは、後に中国語から入ってきた語です。
例えば、「やま、かわ、はな、くさ、木(き)、くだもの、きもの・・」などは「やまとことば」、「山脈、河川、植物、衣服・・」などは「漢字語」です。
中国の漢字を使うようになってから、漢字の読み方としては、漢字に「やまとことば」の意味をあてて読んだのが「訓読み」(山・やま)、中国語の発音をそのまま日本語風に読んだのが「音読み」(山・さん)です。
「やまとことば」は自分たちのオリジナルのことばなので、「家族や親しい人の間」で、「女性、子供」によく使われる、「やわらかい」、「身近な日常語」です。
それに対して、「漢字語」は学問、知識として中国語から入ってきた外来文化なので「改まった場」の「男言葉」、「固い」、「書き言葉」として主に使われてきました。
人前で行うスピーチは「漢字語」を多く使うと固いフォーマルな感じになり、恋文を書くときは、相手の心に直接ひびく「やまとことば」を多く使う方が効果的です。
☆2 まとめると
・・「やまとことば」 ・・・・・・ 「漢字語」・・・・
もともとの日本語 中国語から入ってきた語
日本人のオリジナルの文化 もともと外国語、外来文化
家族や親しい人の間で 学問、知識として、改まった場で
日常語的 学問的、専門的
女性、子供によく使われる 主に男性の間で
やわらかい感じ 固い感じ
主に話し言葉 主に書き言葉
―― 例えば ――
・・「やまとことば」・・・・・・「漢字語」・・・・
いのち 生き物 ひと 生命 生物 人間
おんな お日様 ただ 女性 太陽 無料
くらべる 救う 比較する 救助する
受け取るのはお断りします 受領拒否
入ってはいけません 立入禁止
ひとつ、ふたつ、みっつ、、 いち、に、さん、、
「お~」をつける 「ご~」をつける
お友達 お返し お望み ご入学 ご出発 ご希望
☆3 例外も
日本語は、もともとの日本語の「やまとことば」と、後から入って来た「漢字語」が混然一体となって成立してきたものですが、それでも日本人は「やまとことば」には「お~」、「漢字語」には「ご~」を意識しなくてもきちんと区別して使っています。
しかし、中には少し例外が、、、
「受験」という語は漢字語なのに、子供の私立小学校や中学校の受験に熱心な母親たちが、「柔らかい、女性っぽい、日常語的な」「お~」をつけて「お受験」と使ったところが、「あれ?」と思わせる使い方になっているのです。
☆4 他にも、「漢字語」なのに「お~」をつけているものとして
「お元気、お天気、お約束、お返事、お辞儀、お勉強」
などがあります。これらも母親と子供の間で「日常語」として使われていたので「お」をつけて使ったのです。「和語扱い」といわれます。これらは最初に使われ始めた時は「あれ?」と違和感を感じていましたが、使われているうちにいつのまにか慣れてしまいました。
反対に、「やまとことば」なのに「ご~」をつけて使っている例は
「ごゆっくり(ごゆるりと)」です。
これは音の問題で「おゆっくり」は言いにくいからでしょう。
☆ もう一つ
他に丁寧な接頭語として、神様関係のことばに使われる「み~」があります。
「みこし、みこ、みたま、みかど、おおみかみ、みしるし」などがあります。
もっとていねいに、もっと丁寧に、と思って、どんどん加えていくと「おみこし、おみくじ、おみ足、おみおつけ」などもあります。
ひとことで言うと
「やまとことば」につけるべき「お~」を「漢字語」の「受験」につけたので、おかしく感じました。
* ちなみに
「大~」は原則として、「おお」+やまとことば、「だい」+漢字語ですが、最近どちらにしようか迷っている言葉として、「大地震」があります。「おおじしん」と言っていますか、「だいじしん」ですか?
「地震」の古い「やまとことば」は「ない(なえ)」でしたが、言いにくかったからか、漢字語の「地震」にすっかり取って変わられました。「地震」は身近なことばになっていたので、「おおじしん」と言われ、NHKも「おおじしん」です。
しかし最近「大震災」に引かれて「だいじしん」と言う人が増えてきました。原則に戻ってきた例です。理由がわかっていれば、どちらでもいいのです。 (本来は「ぢしん」と書きたいところですが、、)
漢字語なのに「おお~ 」がつく例としては他にも「大そうじ、大舞台、大勝負」などがあります。やはり固い学問用語ではなく、身近なことばとして使うとき、このように「和語扱い」になりやすいということがわかります。