23. 助詞「は」と「が」の違いを説明できる?  ≪ 江副文法≫

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☆1 例えば このような場合~ 「は」?「が」?

☆2 「は」と「が」は「主語」だけにつくわけではない

☆3 新しい考え方「2列の助詞」

☆4 「は」と「も」がセット―ー頭の中に2つ以上のものがある場合

☆5 「は」と「も」の違い

☆6 「は」は2つ以上のことが頭の中にあり「違う」場合なので、「対比」や「取り立て」の時によく使う

☆7 「が」は頭の中に「そのことだけ」がある場合

☆8 「声はいいけど 他はダメ~」?

☆1 例えば、このような場合~「は」?「が」?

 親戚の結婚式で、Kさんがお祝いのスピーチをしました。その時、私は柱のかげでKさんの顔が見えない所にいたので、声だけ聞いていたら、声がすばらしく良いことに初めて気がつきました。(いつもは顔を見ながら話しているので、そんなに声がよいことに気がつかなかったのです。)

あとで本人に「声いいですね!」と言ったら、「声いいでしょう~?」と笑っていました。

「声いい」と言うと「声いいけど他ダメ」という意味になることを日本人は何となくわかって使っているので、本人が謙遜して言う時はいいのですが、褒める側が「声いいですね」なんて絶対言いません。

それに対して、「声いい」と言えば他のことはさておき、とにかく声がいい!」と褒める意味になります。

この場合、私は「声いいですね~!」と褒め、本人は「声いいでしょう~?(他はダメですが~)と謙遜して茶化します。

「は」と「が」の違いは何でしょうか? 外国人に聞かれたら何と説明したらいいでしょうか?

あえて、簡単に「は」と「が」の基本概念を比較してみれば、」は、頭の中に2つ以上のものがあって比べる場合、「は、頭の中に1つだけある場合、と言うことができます。

☆2 「は」と「が」は「主語」だけにつくわけではない

英語などの文を日本語に翻訳する時、外国人日本語学習者は、「主語」のあと「は」と「が」のどちらを使ったらよいか迷ってしまうので、どうしても「は」と「が」のちがいを見つけようとしていました。

 しかし、まず「は」と「が」は特に「主語」だけにつく助詞ではない、ということに注目することが重要です。例えば、

・”はないちもんめ”の歌 「あの子ほしい~」

・「広島のお好み焼き好き」

・「料理上手な人いい」

・「クレジットカード使えますか?」

・「パソコン得意だけど、ゲーム好きじゃない」

・「山のむこうでは大雪が降っているそうだ」

・「新幹線は新宿駅からは出ていません。東京駅から出ています。」

これらの例文のように「主語」ではない言葉にもつくのです。

実際、「主語」という考え方は、英語などインド・ヨーロッパ諸言語の文法を説明する言葉であって、日本語では印欧諸語のような「主語」を考えると分からなくなってしまいます。「ぞうは鼻が長い」などの例文がよく取り上げられます。そのため「日本語は論理的ではない」などと言われたこともありました。しかし、日本語には日本語の文法体系があるのです。

 

☆3 新しい考え方 ー「2列の助詞」

私が高校生の時、通学途中で知りあったアメリカ人留学生のかわいい女子高校生が「日本人は、先生も、誰も「は」と「が」の説明ができない!どうして?!」と不思議そうな顔でプンプン怒っていました。

外国人にとって「は」と「が」の違いは「永遠の謎?」のようにわけがわからないと絶望しているのに、日本人は誰もきちんと説明できない。今まで長い間、多くの研究者が英語などの外国語文法の発想で考えてきたので、どこまで行っても迷路のようでスッキリしない説明ばかりだったのです。 

そもそも江副先生が「助詞は2列」と考え始めたのは、ブラジルで日本語教育の仕事をしていた時の経験からだそうです。

ある時、日系の子供が「うちのおじいちゃんが『京都行った』と言っていたよ」と言ったら、日本語学校の先生に「京都行ったでしょう?」と直されたということでした。

間違っていると言われても 日本人のおじいちゃんは確かに「京都行った」と言っていたというので、そこで、江副先生は「」について深く考え始めたということです。そのおじいちゃんは「大阪(へ)行かなかったけど 京都(へ)行った」ということだったのですね。

そして、ついに「日本語そのもの」から考えられた新しい文法ができました。新宿日本語学校校長、江副隆秀(えぞえ たかひで)先生によって「2列の助詞」という考え方ができ、今まで何だかぼんやりしてよくわからないと思われていた「助詞」というものがクリアになってきました。(*)

 

☆4 「は」と「も」がセット - 頭の中に2つ以上のものがある場合

 ずいぶん前から助詞には何となく2種類あるということに気づいていた人たちは多くいたようです。そして、その2種類の

1つ目は「京都行く」「大宮ある」「学校勉強する」など「語の前後の関係を表す関係助詞」で、「」「」「」「を」「と」などです。

2つ目は「今日暖かい」「納豆きらいだけど生卵好き」など「2つ以上のものを頭の中に描きその中から選ぶ選択助詞」で、「」「」「でも」「さえ」などです。

「大阪へは行きません」のように「」と「」の両方を一緒に使うことができるということに注目し、1つ目を1列目、2つ目を2列目とすると、以下のようになります。

.     1列目       2列目

.      関係助詞      選択助詞

・ ( ✖ )(助詞不要)  

.                   

.                 でも

.                さえ

.       を

.       と

例えば

・「大阪へは 行かなかった」

「京都(へ)行った」

「 奈良(へ)も行った」

 

・「鉄道博物館は東京にはありません」

「大宮)あります」

「京都にもあります」

 「津山にもあります」

 

☆5 「は」と「も」の違い

2列目の「」と「」は両方とも「2つ以上のものから選ぶ選択助詞」ですが、その違いは、例えば、何人かが並んでいる時、

・「納豆、好きですか」

・「はい、好きです」

・(隣の人)「私好きです」 (前の人と同じ

・(その隣の人)「私きらいです」 (前の人と違ってきらい)

・(またその隣の人)「私きらいです」 (前の人と同じくきらい)

・(  〃  )「私好きですよ」 (前の人と違って好き)

のように、2人(2つ)以上の場合で、前の人と同じ場合は「私~」になり、前の人と違う場合は「私~」になります。

 

「も」は2つ以上のものについて話していて「〇と同じ場合」、

・「これ、あれ好き」

・「今日コロッケ、あすコロッケ~」

 

「は」は2つ以上のものについて話していて「〇とは違う場合」、

・「これ好きだけど、あれきらい」

・「今日ダメだけど、明日大丈夫」

 

「は」と「も」は、頭の中に2つ以上のこと(もの、人)を考えていて

同じ」場合は「」、

違う」場合は「」を使う、ということです。

 

☆6 「は」は2つ以上のことが頭の中にあり「違う」場合なので、「対比」や「取り立て」の時によく使う

・ 歌大好きですが、カラオケあまり行きません。

・「今日暖かいですね。」(昨日は寒かったという時)(もし昨日も暖かかったのなら「今日暖かいですね」 )

・(女性に対して)「今日きれいですね」と言うと、昨日きれいではなかったことになるので、言わない方がいい表現として教えます。

 

☆7 「が」は頭の中に「そのことだけ」がある場合

他のものと比べたりするのではなく、そこにだけスポットライトが当たっている感じです。 例えば、

・目の前のこと  「あ、鳥飛んでいる!」 「あ、虹きれい~!」

・強調したい時  「これ、私作ったんですよ」 「これ、この間話していた本です」

・疑問詞のあと  「誰壊したんですか」 「どこいい?」 「何好き?」

・名詞を限定(修飾)する節の中  「私昨日聞いた話では~ 」

「私が昨日聞いた」が「話」を限定しているので、頭の中にはそのことだけ。

 

☆8 ☆1の例に戻ってみると

 「声いい」と言うと「声のこと」だけが頭の中にあるので褒めることができますが、「声いい」と言うと他のことも頭にあり「声いいけど他悪い」などという意味になってしまいます。褒めるつもりなら必ず「声いいですね~!」と言うように教えましょう。

もしも、顔良い人なら「声いいですね~!」

 

もう一度 あえて ひとことで言うと

」は 頭の中に2つ以上のものがあって、その2つが違う場合

」は 頭の中に1つだけある場合、ということができます。

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(*) 江副隆秀先生は 3年間の癌闘病生活の後、2024年12月18日亡くなられました。

江副文法の「2列の助詞」については『新版 見える日本語、見せる日本語』江副隆秀著 創拓社出版 2014年